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2009年6月15日更新 |
線香(中国語 綫條香 )
線香の香りは仏様に届くだけでなく、その香りをかぐ全ての人に徳を与えると言われています。
無限の広がりをもって良い香りを放ち、時と場所の不浄を清めてくれる徳をもっています。
身体や心の汚れを払い、清浄な心で仏様にお参りをするためにお線香をたきます。
一度火を点すと燃えつきるまで芳香を放ち続けることから、
命ある限り仏様の心に沿うように努力し続けることをあらわしています。
線香をあげるときは
仏様やご先祖様に感謝の気持ちと供養の気持ちを大切に供えるようにしましょう
■線香の歴史
線香の歴史は大変古く、中国で始まったと言われています。
日本に伝わったのは今からおよそ400年前のことで、製造法が中国から伝わったのが始まりです。
日本では、広く一般に使われていますが、これは中国で開発されたお香で、
日本には江戸時代初期に広まったものです。
それ以前はインド伝来の焼香は抹香。つまり粉末状や木片を削ったかたちのものです。
■線香の起源
線香の起源は水時計に始まります。
時計とはいえ、香ですから時間を計るものではありませんでした。
やがて1日を百刻に目盛りを刻んだ香時計(百刻香印)が考案されました。
香時計とは、木製の円盤に1本で繋がる複雑な型を作ります。
1日を12辰に分けて、中心から放射状に迷路のような模様の溝を刻みます。
この長さと幅はおよそ1昼夜用の長さです。
これを香印と呼びますが、香印を盤内の灰に押して型をつくり、できた溝に香抹を盛ります。
これに火をつけて燻らせるのが香時計です。一定の時間に香を盛って炊き継いでいきました。
日本で最も古く、今に残る香時計は、東大寺二月堂のお水取りの作法の中に存在しています。
香時計の香りには、沈香、壇香、乳香、甘松などがありました。
■日本で初めての線香
日本で初めての線香は1662年、中国の帰化人が作り始めたと言われています。
■線香の原料
今使われている代表的な香末は、沈香・百壇・丁字・桂皮などの植物性のものに、
麝香などの動物性のものを合わせて成形します。
それから導火のための素材に樹皮を用いています。
■作り方
原料の素材を粉末にして、ススや染料で着色して練ります。
その後団子状に固めて圧力をかけて棒状に押し出し(多くの穴の空いた型を用いて押し出します。)、
さらに一定の寸法に切って板に並べ、ゆっくり乾燥させ、束ねます。
線香づくりは今も昔も熟練の技が求められます。
そして線香から漂う香りは、人の知恵やセンスが込められています。
■香りの主な種類
●白檀
インドや東南アジアなどで産出する常緑樹です。
インド南部産のものが上等とされています。材料そのものが香ります。
数珠や仏像などにも使われます。
●沈香
東南アジアの沈丁花科の木の中に溜まる樹脂です。水に沈む素材のため沈香と呼ばれています。
●伽羅
最高級の沈香の呼び名です。ベトナムの限られた場所で産出されます。
古くから品位の高い最上の香りとして、大切にされています。
このほかに丁字や桂皮などがあります。
■線香の種類
●匂い線香
匂い線香には儀式用と香粧用があります。
寺や宗派の伝統や読経の時間に合わせて、太さや長さ、香りなどを考えて丁寧に作られます。
現在、最も広く使われている匂い線香はタブの木の樹皮の粉末を主原料にして、
各種の香木や香料を加えて製造されるものです。
長さはいろいろで、14センチの短寸、16センチの中寸、25センチの長寸、
33cmの大薫香、54センチの中天香、66センチの大天香、
これらの他に渦巻き状のものなどがあります。
●杉線香
屋外の墓所などで使うのが杉線香です。
杉の木や葉の粉末を主な材料として作ります。
●蚊取り線香
防虫用のお線香です。
材料に除虫菊を加えた巻き線香です。
■線香の供え方
先ず仏前に座り
線香に直接ライターやマッチなどで火をともすのではなく、
先ずローソクに火をともします。
ローソクにともした火でお線香に火をともします。
お線香に付いた火は口でフッと消さず、手であおいで消すようにします。
線香の香りは仏様にお供えするものです。
その大切な線香の火を人の口で吹き消すということは清らかな香を汚すことになります。
そして、線香を香炉(線香立てで中に草木の灰が入っている)に立てます。
立てる本数ですが、宗派によって異なりますが、御供えする本数は1~3本が一般的です。
お線香を立てず、適当な長さに折って火を付け、香炉に横に寝かせる宗派もあります。
普通は Xの方が一般的です
仏前への基本的なお供えとして灯・花・香があります。
闇を照らす灯明は「物事の正しい道理を見詰める力」の象徴であって、智慧を表します。
周囲を飾る花は「苦を除き、楽を与える行為」の象徴であって、慈悲を表します。
香は智慧の火をともし、慈悲の香りが隔てなく四方へと行き渡る。
そして燃え尽きた香は灰となって、次の香を焚く土台となる。まさに精進ですね。
灯明・花・焼香以外に水と飯もお供えしますが、
水はインドでは家に入る前に足を洗っていたところから、と言われ
仏の足をすすぐ水であり、執着心を捨てて他者に施す意義として「布施」です。
飯…身体を養い、体力を維持させるところから、瞑想修行の実践である「禅定」。
線香を3本立てる宗派がありますが3本の意味を次のように言います。
三密
三密とは身口意(しんくい)のことです(身語意ともいう)。
身密…肉体の修行(印を結ぶ)
口密…言葉の修行(真言を唱える)
意密…精神の修行(瞑想をする)
三宝
仏…真理を悟ったもの
法…仏の解き明かす真理
僧…仏の教えを実践する集団・教団
三世
過去、現在、未来の三世を表す
■中国の線香
宿泊した福清のホテルの食堂で撮った写真です
ご本尊は違いますが、日本の仏壇に似ています。
お供え物、明かりもあります。そして線香も焚いています。
残念ながらよい香りがしませんでした。
日本の仏教も中国仏教の流れですので、儒教や道教の思想がたくさん入っています。
仏教と言っても、祖先神信仰が非常に強いです。
ですから、
ご先祖様が眠っているのは、一般的にはお墓と考えますので、
春、秋のお彼岸の日には、お墓参りに行きます。
又、お盆には、ご先祖様をお墓に行き、お迎えし、自宅にお招きし、終ると送り火を焚いてお見送りします。
日常でも、
日本の家庭にある仏壇は、ご家族を守る仏様(ご本尊様・如来様)の住まいと考え、
ご仏前に座った際には、ご先祖様が帰って来ていると考えます。
ですから、仏壇には、亡くなった御先祖(祖父・祖母・父・母など)の位牌(いはい)を奉っています(祭り、まつり)。
子供は、今があるのはご先祖様のお陰なのですから、心から感謝しましょう と教えられて育ちます。
感謝とは思い浮かべて有り難いと思うことです。
仏様、ご先祖様のご馳走は「思いやりと真心」です。
どうすれば喜ばれるのか?
ご先祖様にお線香をあげてあげると、その気持ちを召し上がられ喜ばれますし、
ご先祖様だけでなく、香りは仏さま、菩薩さまを供養し、
ひいてはご先祖様の所まで届きますようにと供えるそうです。
燃えればよいのなら雑草でも、油を付けても良いそうですが、家の中では家事になります。
お線香に火を点ければおしまいではなく、この心を相手に伝えたい祈り、
良いい香りが届きますようにと、本来は思いやりと真心でもてなすそうです。
こんな逸話も聞いたことがあります。
ある夜、お釈迦が祇園精舎へ入られる時、皆それぞれに百、あるいは万のあかりを供養しました。
着のみ着のままの老婆も東奔西走して、ようやく一燈をともすことができました。
やがて大風が吹くと、あかりは消えていきましたが、
信心が強く、志が深い老婆のあかりは消えなかったそうです。
苦労して付けるお線香にこそ価値と喜びがあり、硬い揺るがない決意が宿るのだそうです。
そしてご先祖様とお話をして明日からも頑張ると言う誓いをたて、手を合わせるそうです。